先日、自民党総裁選の日程が2024年8月20日に決定されるというニュースに絡み、自民党総裁選に出馬表明した石破茂氏という政治家について、簡単な来歴と「おそらくこういった理由で嫌われているのであろう」ということの一部を書きました。推薦人が20人集まるかどうかはわかりませんけど、当人は目処がついたと言っていますね。
私は、彼が総裁選で選ばれ自民党総裁になれるかというと、無理であると考えます。まあ選ぶのは自民党員の方々なので、的外れかもしれませんけど。私は自民党員ではありませんので。
彼の国民的人気が高いことが、私にはちょっとわかりません。
ただ、私には彼の人気が理解できなくても、彼が非常に興味深い人物であることは間違いがないでしょう。インタビューなどで彼の話を聞いてみると、そのこと自体の是非や好き嫌いはともかくとして、一本筋が通っていることがわかります。
しかしながら、彼の主張というのは、とにかく地雷を踏みにいきます。それこそ、右足でも左足でも。彼の主張のほんの一部とともに、どういった形で地雷を踏んでいるのかを考えていきます。
どうせほとんど誰も読みませんので、すべてを書くようなことはしません。それをするには膨大なエネルギーが必要ですが、そのエネルギーをかけるに見合った何かが得られるわけでもないからです。
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石破茂「わが政策、わが天命とは…(ネットリ」
石破茂氏の主張
左足で踏んだ地雷
憲法九条二項の削除
第九条①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
実は、この主張自体は石破茂氏のオリジナルなものではありません。2012年に自民党が決定、発表した「日本国憲法改正草案」に則ったものです。
この、「日本国憲法改正草案」は自民党のなかで何年も議論をされ2012年に「党議決定(党として決定)」をしたものです。全文は自民党のサイトで読むことができます。
安倍晋三が気まぐれに「③項として自衛隊の存在を明記すれば」などと口に出したことがありました。岸田文雄や総裁選候補が独自の改憲案をだすこともあります。
これは、連立政権を組む公明党に配慮したものです。公明党が自民党との連携を解消して野党側にまわった場合、自民党政権は簡単に崩壊するから配慮をしなければならないのですね。
総理大臣や総裁選において総裁候補がそういったことを口に出すたびに「であればその改憲案で党議決定をきちんとしましょう」と口うるさく言うのが石破茂氏でした。
"この「日本国憲法改正草案」を議論のスタートにしよう"、というのが石破茂氏の憲法改正に対するスタンスであり、当人としても憲法九条二項の削除にはこだわっているように思われます。
ノンポリを含む政治信条を問わず、0か1かで物事を考え、また人の話を最後まで聞かず、物事を深く調べない傾向のある方々がいらっしゃいますが、左足でそのような傾向のある方々の地雷を踏み、脊髄反射的に「石破はダメだ」と言われてしまうのです。
もっとも、この自民党の「日本国憲法改正草案」は人間が持つ天賦の権利である「基本的人権」が国から与えられることになっていたり、憲法をまもる主体が為政者だけでなく国民であったり(そもそも憲法というのは為政者が護らなければならない最高法規で各種法律の根幹となるもので、国民に憲法を守れというのは筋違い)と問題だらけであり、多くの人を呆れさせたものでした。また、改憲案の一部が旧統一教会🏺の主張と完全に一致している、など近年でもツッコミが入っています。
詳しくは、古い本ではありますが東京新聞政治部の記者たちが書いた「読むための日本国憲法」という良書があります。内容として、各条文の解説を基本に、他国の憲法との比較、国会であった議論や各党の主張、一般的でない用語の注などがあります。買った当時、この本が630円で買えるんだすごい!と思いました。ぜひご一読ください。
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あとは、蛇足ながら一応書いておきます。
「自衛隊は憲法違反なのだから改憲しなければならない(orなくさなければならない)」というロジックは数十年前のもので議論としては周回遅れのものです。
国会をはじめとしたさまざまな議論の結果、現在の憲法解釈は憲法前文の
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
(平和的生存権)
および第十三条の
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
(幸福追求権)
を根拠に、「国民の平和的生存権および幸福追求権を、国家として守るために存在する」となっています。
右足で踏んだ地雷
女系天皇の容認
これは危機管理からでたことでしょう。
現在の皇位継承順序は現在、秋篠宮親王、悠仁親王、常陸宮親王となっていますが、その方々に何かあった際のことが何も決まっていないのですよね。
それをきちんと決めるために「男系の女性天皇」「女系の男性天皇」などあらゆる可能性を排除せずにきちんと議論をしましょう、ということを言っています。
ノンポリを含む政治信条を問わず、0か1かで物事を考え、また人の話を最後まで聞かず、物事を深く調べない傾向のある方々がいらっしゃいますが、右足で、そのような傾向のある方々の地雷を踏み、脊髄反射的に「石破はダメだ」と言われてしまうのです。
「あらゆる可能性を排除せず」だけでもいいのに、きちんと具体例まで出すので地雷を踏んで「石破茂は女系天皇を容認している!」なんて批判を受けることになります。
もっとも、あらゆる可能性を排除しないのであれば、最悪の事態として「皇統が途絶えたら日本を共和国とする」という可能性もまた排除すべきではないわけで、そこまで言うと右足で更に大きな地雷を踏むことになります。
当然、考えてはいるでしょうが、そこはこらえたのでしょうね。
まとめ
最後に
石破茂氏が推薦人20人をあつめ、自民党総裁選に立候補できるのか、できないのか、それはわかりません。
もともと、統一教会との関係や裏金問題があり、自民党に逆風が吹いている中での総裁選です。その後、「自民党が襟を正して変わるかどうか」ということを衆議院選挙で国民の審判を受けることになります。
その候補者が「憲法九条二項の削除を議論しなければらない」などと唐突に言い出すのは、突拍子のないことを言って、世間をざわつかせて、本来何が問題なのかを誤魔化しているようにも思えます。
先日発売された、石破茂氏の著書を読みました。
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石破茂「わが政策、わが天命とは…(ネットリ」
基本的には自伝に近く、思い出話など石破茂という人物を形成した人物に対しての話ばかりです。当人の「信念」であるとか「理念」であるような話が多いですね。
本書に限らず、彼が口にすることで具体的な内容というのは「防災庁の設立」であったり彼が得意とする「軍事」に関することばかりです。
あとは、例えば「○○をスタートに議論をする」であったり「△△といったことが大切です」という内容が多いです。石破茂氏は、自身を「保守リベラル」であると言っており、私は私でリベラルを自認していますので理念としては重なる部分が多く「そうだねそれは大切だね」なんて思いつつ「そのためにこうする」がないので単にモヤモヤするだけです。
また「野党がダメだから与党がダメになる」ということを書いており、例えば「野党は答弁に対して時間がないことを理由に食い下がらない」などと国会で野党の質問について駄目出しをしていますが、そもそも国会の委員会における野党の質問時間を減らしたのは安倍政権時の自民党であったのを知って書いているのでしょうか。(安倍政権が終わった現在は、ある程度元に戻っているはずです)
国会における野党の質問時間が大幅に減ることについての攻防は、辻元清美氏の著作「国対委員長」でリアルに書かれています。あのオバちゃんが自民党の国対委員長(※)と直談判するため自民党国対の控え室に単身乗り込み、控え室にあるハーゲンダッツ(立憲の控え室にはガリガリくんしかなかったらしい)をタカって最終的に3つ食べながら交渉したくだりは笑いつつ、「このオバちゃん、たいした人だなぁ」と思ったものです。大阪のオバちゃんしゅごい。選挙区で自民党候補が立候補しているのに、自民党長老の一人である山崎拓氏が対立候補である辻元清美氏を応援して処分を受けた、という逸話がありますが、なんかわかる気がします。
※ 各党にいる国会対策委員長、国会のスケジュール等を調整する役職
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石破茂氏、興味深いし、嫌いにはなれない。対米従属からの脱却を説く数少ない政治家だけど、やっぱりダメだね、この人は。
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