はじめに、このシリーズはこれで終わりにします。書きたいことを、書きたくなった時に書いているのですが、書きたいことは全部書き切りました。
ちなみに、毎日ブログを公開していますが、毎日ブログを書いている訳ではありません。文章を書くというのは、私の忙しいときの逃避行動で、数記事まとめて書いて、それを予約投稿しています。
蓮舫氏ほどデマとそれに伴う中傷を受けている方はいないと思っていて、個人的にはあまり好きな人ではないのですが、書かずにはいられなかったのです。相当量のテキストになってしまいました。お陰で仕事が全然片付いていません。

都知事選に立憲民主党の蓮舫氏が、無所属での立候補を表明しましたね。産経新聞が早速攻撃しています。ボーナス云々もあるのだろうけど、やらかしの結果の辞職と、何もやらかしていないけど都知事選に出馬するので辞職するのを比較するのって、比較対象になりますか?
こういう風に、彼女にまつわる報道などは悪意に満ちています
。現在、通常国会の真っ最中でスケジュールも色々決まってるでしょうから、キリの良いところで議員辞職するのだと思いますよ。まず、産経新聞社に問いたいのは、産経新聞社は自己都合退職する社員に対して、ボーナス支給日前に退職を迫るブラック企業なのでしょうか。この記事に脊髄反射的に反応してボーナス云々言ってる人は、転職するとき引き継ぎしないで仕事辞めるのでしょうか

都知事選は、この記事を書いている時点では出馬表明をしていませんが、小池百合子氏と蓮舫氏の一騎打ちの様相が見られます。
その他は泡沫候補といって差し支えないでしょう。


もっとも、蓮舫氏もまともに小池百合子氏に勝てるとは思ってないのではないかと考えます。
早ければ、9月の自民党総裁選のあとと予想される、衆議院選挙に向けてのパフォーマンスではないかと考えます。
蓮舫氏は、4期目の参議院議員ですがこれ以上政治家としてステップアップするためには、首長になるか衆議院議員になるか、というところです。そのうち、もっとも敷居が低いのが衆議院議員でしょうからね。

私は、都民でもなければ月に片手で数えるほどしか都内にも行きません。
ほぼほぼ、誰が都知事になっても無関係なんですけど、国政・地方選挙問わず選挙をウォッチするのは好きなんですよ。
なので都知事選についても気にしてはいます。

支持・不支持というお話ではなく、個人的には現職の小池百合子氏が負けるとは思っていません。

折りに触れて書いていますが、私は個人的に蓮舫氏が好きではないです。
しかし、蓮舫氏が出馬するにあたって、彼女を中傷するデマがたくさん流れると思いますので、あらかじめそれを打ち消す記事を書こうと思います。
公平ではないし、誰であってもデマによって中傷されるべきではないからです。
この記事は都民の皆さまに蓮舫氏への投票を呼びかけるものではありませんし、逆に小池百合子氏への投票を呼びかけるものでもありません
何か呼びかけるとしたら、「デマに流されない」ということと「きちんと選挙に行きましょう」ということだけでしょう。

前々回は、二重国籍問題について書きました。
二重国籍は解消されています。
また、中華人民共和国が台湾籍であった蓮舫氏を「中国系議員」と報道するのは、中華人民共和国が「一つの中国」を提唱しており、台湾を中国の一部と看做しているからです。
蓮舫氏を中国系議員で中国のスパイと言うのであれば、それは台湾の独立を認めないことに繋がります。
台湾の独立を支持し、台湾を応援するなら蓮舫議員を「台湾系議員」と呼称すべきです。

前回は、スパコンの事業仕分けについて書きました。「2位じゃダメなんですか」のアレです。
あれは発言の切り取りであり、議事録を読むと多数の有識者が参加した事業仕分けの議論は至極まっとうなものです。
蓮舫氏が政治ショーで予算を凍結した訳ではなく、それこそ自民党政権の頃から指摘されていたことであり、スパコンの予算は凍結されてしかるべき、といえる方向性のものでした。議事録読むと蓮舫氏、意外と優しいね。

今回は、スパコンと並んで蓮舫氏を"IT音痴"と揶揄する「クラウド蓮舫」、「サーバー増やすって、時代はクラウドですよ」発言についてです。

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「時代はクラウドですよ」という発言について

前提知識

クラウドコンピューティングとは何か、ということを説明するためには、まず対義語として生まれたオンプレミスについて説明しなければいけません。

オンプレミスというのは、どういうものかというと。
政府や企業・団体が自身でサーバーを購入し、サーバー室やデーターセンターにネットワーク・サーバー機器を置いて利用する使い方のことです。

メリットとして、自由度・カスタマイズ性が高く、長期的な目線ではこちらの方が価格が安いです。
デメリットとしては、機器の増強などをする際、「見積取得→発注→購入→設置→OSインストール→設定」などのプロセスがあり、実際に利用できるまでのリードタイムが非常に長いです。

対して、クラウドとは。
そもそもクラウドというのは「雲」という意味なのですが、雲の後ろにコンピュータがある、ネットワーク/サーバー機器があるということを示しています。
パブリッククラウドと言われているのですが、AmazonやGoolge、Microsoftなどのクラウドサービスを提供する企業があらかじめサーバーを用意しています。
ユーザーはサービスを契約し、WEBから契約したサーバーなどのサービスにアクセスしオンデマンドに利用します。

メリットとして、契約してから利用できるまでのリードタイムが非常に短いことにあります。WEB UI(WebブラウザでアクセスするUser Interface)から数クリックしたら数分でサービスが利用できるのですから。
デメリットとして、自由度が低い、例えばAmazon Web Service(AWS)を利用する場合、AWSの仕様にのっとってシステム構築をしなければなりません。
また、パブリッククラウドの提供会社は前述の通り、あらかじめサーバー/ネットワーク機器を大量に用意している訳であり、その投資を回収するため長期的に見ると費用が割高になります。

結論:発言の切り取り

この発言に対するツッコミが「クラウドはサーバーの集合体なので、コイツは知ってる言葉を適当に並べているだけだ」というような趣旨のものでした。まあ「USBは穴に入れるらしいですけれども、わからないので、官僚に聞いてください」というセキュリティ担当大臣がいたので、「国会議員=IT音痴」、という先入観を持っている方も多いでしょう。しかし、思想信条はともかくとして、例えば自民党で名前を挙げるなら河野太郎氏や、平将明氏のようなITに明るい前向きな議論をされる議員もいます。当然野党にもいるでしょう。ちょっとバカにし過ぎではありませんかね。

結論から、これも発言の切り抜きです。ある程度ITに関する知識がある前提で、議事録をきちんと読めばわかるのですよね。

蓮舫氏の会話のについてかいつまんで記載します。
話はまず、特別定額給付金(10万円)の給付遅れからはじまります。

  • 蓮舫氏、2020/6/5時点で3割にしか給付されていないことを指摘
  • 蓮舫氏、高市早苗(当時)総務大臣が、マイナンバーカードを使って申請してくれといった結果、マイナンバーカードの申し込みが殺到したと指摘
  • 蓮舫氏、自治体のネットワークとマイナポータルが繋がっていないため、「役所の人がデジタル申請されたものを紙に印刷し、自治体のシステムと照らし合わせて目視で確認する」といった余計な作業が発生していたから給付が遅れているのではないかと指摘
  • 蓮舫氏、マイナンバーは、地方と国を繋ぎ、効率的に市民の利便性を高めるために作られたこと、平成24年から6400億円の税金を投じていることの指摘(筆者注:なのに繋がってない!?)
  • 蓮舫氏、マイナンバーのシステムを管理しているJ-LISという機構の天下りについての質問
  • 蓮舫氏、給付金のためのマイナンバーカードの申請や、パスワードの更新などでアクセスが殺到してシステムの遅延が起きた件について、全国民が使うことを前提としたシステムのはずという指摘
  • 蓮舫氏、マイナンバーカードの普及率が16.8%に関わらず、マイナンバーカードを持っている人の10 %がアクセスをしただけでシステム障害が起きるのは問題であると指摘
  • 高市早苗総務大臣がサーバーを増やしますという答弁
  • 蓮舫氏、結局、システム障害の問題はなんだったかという質問
  • 高市早苗総務大臣がサーバーの容量が問題だったいう答弁
  • 蓮舫氏、e-taxを例にとり、どれ位の利用者がありどれ位の容量がいるか国税庁へ質問
  • 国税庁の担当が「e-taxは、個人1040万件の申請に対して、サーバーのキャパシティーは2200万人を確保している」と答弁
  • 蓮舫氏、マイナンバーカードは夏に4000万枚の普及を見込んでいるのに、200万アクセスでシステム障害が起きているという指摘、その再発防止策について質問
  • 高市早苗総務大臣が、9.3億円かけてシステムの処理能力を増強するという答弁。(筆者注:高市氏、言葉を換えただけでサーバー増やしますしか言ってない)
  • 蓮舫氏、それに対し、詳細な分析なしにJ-LISに予算をそのまま渡すのは適切か、という質問
  • 高市早苗総務大臣が、RAサーバーを4→12台に、CAサーバーを2→6台に増強するため、9.3億円の予算となると説明(筆者注:高市氏、具対数を出しただけでサーバー増やすしか言ってない)

で、この発言にいたります。




サーバーは増やすんじゃなくて、時代はもうクラウドなんですよ。
だから、これまでの積み上げてきたもののベンダーの継ぎはしのシステムじゃなくて、本当に問題がどこにあるかというのを確認をして、それで予算付けをするなら分かるけれども、言われたがまんまにお金を支払う。税金は限りがある。
大臣、これ、しっかり機構の人を呼んで確認をして、そして本質的な改善策を講じていただきたいと改めてお願いをいたします。なぜなら、この機構は、システム独占だけじゃなくて、マイナンバーカード発行も独占しているんですよ。令和二年度の予算案七百十一億が、マイナンバーカードを発行したら地方自治体を通じて国から税金で補填をされる。収入の七割ですよ。カード発行すればするほど潤う機構なんです。潰れない機構なんです。
ここはしっかりしていただけませんか。

(太字は引用者)
引用元:第201回国会 参議院 予算委員会 第21号 令和2年6月11日議事録

これに対して、蓮舫氏がTwitterで補足説明をしています。


これを踏まえて、解説をします。
官公庁や比較的よくサーバーの更改をする企業は、だいたい5年おきにシステムを更改します。
これは、税法上のサーバーハードウェアの耐用年数が5年だからです。減価償却が終わってキリがいいので入れ替えをするんですね。
ある程度の規模のシステムは、複数のサーバーハードウェアやネットワーク機器、ストレージシステムなどを組合わせてシステムを構築します。
実際、ハードウェアは5年以上もちますし、メーカーも保守してくれますが、OSやその上のソフトウェアのサポートライフサイクルから見て、費用さえあれば5年で更改するのは理想的であると言えます。

既存のシステムにサーバーを追加する場合、システムを構成するサーバーの更新時期がずれることになります。
更新時期がずれると、既存のシステムが一括で更新しにくくなります。先に入れたものに合わせると、減価償却が残っているサーバーが残ってしまうし、後に入れたものに合わせると、更新自体が遅れてしまうことになるからです。
積み上げてきたもののベンダーの継ぎはしのシステム」という表現はこういうことですね。
政府として、パブリッククラウドにシステムを移行してく計画は2020年以前からあったようです。
現に2022年に政府クラウドとしてAmazon AWSとGoogle Cloud Platform(GCP)を採用しています。

また、2023年には国産クラウドとして初めて「さくらインターネット」をクラウドサービスプロバイダとして指定しています。

その影響で今年、「さくらインターネット」の株価は急騰しました。

話を戻しまして、繰り返しますと既存システムに安易にサーバーを追加してしまうと、更新時期がずれ込みクラウド化が遅れるデメリットがあります。
蓮舫氏が言いたかったのはJ-LISという機構(とシステム運用を請け負うITベンダー)から、言われるがままにサーバーを増強するのではなく、問題が起きた原因をきちんと分析した上で予算を出してください、ということですよね。
なぜかというと、このJ-LISという機構がマイナンバーカードのシステムを一手に引き受けていて、マイナンバーカードを発行するたびにお金が入る機構だからだと。

少なくともIT音痴の発言には思えません。
もし蓮舫氏と実際にお話ししたとして、細かい技術的な言葉は怪しいかもしれませんが、大枠はきちんと押さえているかと思います。

関連リンク

令和二年六月十一日(木曜日) 参議院予算委員会 議事録
→蓮舫氏の質疑は発言11からで、該当部分は発言115から

まとめ

「時代はクラウドなんですよ」についてのまとめ

  • 発言の切り取りである
  • システムのライフサイクルなどを考慮して発言をしている
  • 蓮舫氏は、専門ではないにしろ間違いなくIT音痴ではない

所感

この発言を初めてみたとき、私はオートスケールの事を言っているのだと思いました。「へぇ、蓮舫よく知ってるな」くらいに考えていたのですが、今回改めて議事録を読んで、この人すごく勉強したんだなぁ、と感じました。
ちなみに、本当かどうかはわかりませんが、システム障害が起きた公的個人認証サービス(JPKI)はオートスケールに対応している設計になってないそうです。

ところで、高市早苗氏の答弁を見るに、当時はこのシステム、仮想化すらされていなかったように見受けられます。
全国民が利用するという前提のシステムであれば、少なくとも普及状況に応じて柔軟にリソースを追加できるような設計にすべきであったと考えます。
少し、仕様を調べてみようかと思いましたが、デジタル庁とNDAを結ばなければならないため断念しました。

都民の皆さん、「デマに流されないで」ということと「きちんと選挙に行きましょう」ということをもう一度。
基本的には、小池百合子氏の信任投票という構図でしょう。
なんか、「あなたの考え方は何党に近いか」みたいなサイトがあるじゃないですか。首長や小選挙区制のような一人だけが選ばれる仕組みの選挙の場合、ああいうのは害悪しか無いと思うのですよ。なぜなら、現職の批判票が分散すると、結局現職が勝つという仕組みになるのです。現職に批判があるなら、一番の対立候補に入れる。現職を信任するなら現職に入れる。これが一番シンプルでいい。日本にも、予備選挙というやり方が定着すればいいんですよ。

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