彼女と「横浜美術館」に行ってきました。
この日は、年間パスを買ったあとになかなか行けずにいた上野の「国立博物館」に行く予定だったのですけど、前々から行きたかった企画展「おかえり、ヨコハマ」が6月2日に終了します。
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横浜は、関東の片田舎に住んでいる私にとって、かなり遠いので敬遠をしていたのですが、いい加減行かねばならないと思い、彼女と合意形成して予定変更をすることにしました。

先に全体的な感想を書いてしまいます。すげー良かった。いい意味で「思っていたのと違う」、いい意味で裏切られました。
メチャクチャ硬派な企画展だったと思います。
もちろん、興味は人それぞれなのですが、「いや、絶対に行ったほうがいい」と伝えたいです。
そのため、ちょっとしたレポートを書くことしました。

「おかえり、ヨコハマ」

横浜美術館が2月8日にリニューアルオープンしたため、その記念の企画展です。

日本のなかの、横浜という都市の歴史を、時系列に沿って展示品で紐解いています。
章ごとに異なる展示室でした。

第1章 みなとが、ひらく前

弥生時代から、開港前までの展示品(土器や石器)などで構成されています。
開港までの横浜は、人口の少ない、半農半漁の寒村でした。

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第2章 みなとを、ひらけ

横浜港の開港前後の、展示品で構成されています。
ペリーの来航や当時描かれた風景などの絵画です。


直接の言及はありませんが、横浜港の開港が決まった「日米修好通商条約」などの不平等条約をきっかけに「桜田門外の変」がおき、一気に日本が血なまぐさくなったことはよく知られています。
この企画展は、本章に限らず、こういったことに、「自然と気付く」ように巧みに構成されています。

第3章 ひらけた、みなと

開港後、外国人の土産物や、明治政府が進めた輸出政策で産業が発達しました。
外国人向け絵画や陶磁器など、遊郭などの絵画をメインとした展示品で構成されています。

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サラっと言及をされていますが、この時期に今で言う「インバウンド需要」によりインフレが発生しています。これは、自然と現在の日本に重ねることができるでしょう。貧しい日本人向けに商売をするより、お金を持っている外国人向けのビジネスをした方が儲かるのですから。
また、「生糸輸出で財をなした商人」とその事績が紹介されていますが、その裏側で当時は製糸産業および紡績産業において女工が積極的に活用されました。
低賃金で長時間労働を課せられた「女工哀史」や「あゝ野麦峠」を連想する人がいるかもしれません。

第4章 こわれた、みなと

日本で最大の港町となった横浜、その横浜生まれの画家たちの作品と、関東大震災による被害の写真などで構成されています。

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この辺りからだんだん、硬派になってきます。
関東大震災の発生により、横浜刑務所は受刑者を一時的に解放しました。


関東大震災の、女性被災者の手記が展示されています。
「囚人が刑務所から脱走し、強盗強姦などの乱暴狼藉、井戸に毒を入れるなどの流言があり不安である」ということが書かれています。
実際はこれはデマだったらしいのですけど。

同じ関東大震災、どこかで同じようなデマがあったことを聞いたことがある人は多いはずです。
自然と、関東大震災においての朝鮮民族・華僑に対する虐殺や「福田村事件」のような、日本人が日本人を虐殺した悲劇を連想するでしょう。

フェイクニュースや、それらがSNSで拡散されいる昨今に関しての警鐘のようにも感じます

第5章 また、こわれたみなと

日中戦争から、第二次世界大戦にかけての展示物で構成されています。
金属類回収令により橋の金属が少しづつなくなっていくさま。
また、戦中から戦後までの一時期、小学校の先生であった画家、片岡球子さんの作品から、当時の、横浜における子どもたちの多様性を知ることができます。

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※ 片岡球子さんが教え子を描いた絵。チマチョゴリを着た少女が控えめに、少し距離を置いているのが非常に印象深い


多様性とはいうものの、時代背景からそこに差別と偏見があったことを自然に連想できます。

第6章 あぶない、みなと

横浜は、アメリカ軍による占領政策の窓口として機能していました。港湾部が接収されたため、貿易がメインだった横浜の経済は崩壊し混乱します。
そんなアメリカ軍による占領期の写真などの展示物で構成されています。

赤線地帯(売買春が黙認された地域)や青線地帯(非合法な売春地域)、アメリカ軍専用の遊郭やそこで働かざるを得なかった女性たちを、写真家である常磐とよ子さんは撮り続けました。
アメリカ軍と市民の関わりを奥村泰宏さんが撮り続けています。

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軍人が帰国にあたって育児を放棄して取り残された、いわゆるGIベビーたちと彼らを支援する施設にいる、子どもたちの写真があります。
彼らが、貧困、差別や偏見にさらされたであろうことは容易に想像できます。


これら知識としては知っていることも、実際に写真でみると、新しい衝撃を受けます。

また、このような話は世界中にあり、加害者が一転、被害者となる。被害者が新たな加害者となる構図は人間の業の深さを感じさせられます。

そんな治安の悪いイメージから横浜を舞台とした映画が作られ、黒澤明の映画のポスターなども展示されていました。


しかし、ちょっと解せなかった。不思議だったのが横浜は明治以降多くの在日華僑がいる街でもあります。不自然と思えるほど在日華僑に対する言及がありませんでした。これは一体どういうことなのでしょうか。
横浜中華街と、在日華僑は横浜の多様性の一つであるのは周知のことでしょう。

第7章 美術館が、ひらく

硬派な展示から一転、ここからようやく美術館らしくなってきます。
横浜美術館を作る計画についての史料や、ピカソ・ダリ・ロダンなどの展示をみることができます。


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第8章 いよいよ、みなとがひらく

最後にここにきてほっとしました。
横浜美術館が収集したさまざまな現代アートを見ることができます。

企画展の最後、もともとの目的だった、奈良美智の「春少女」をみることができました。

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最後の展示は奈良美智さんから子どもたちへのメッセージでした。

このあと、食事を摂ってから常設展示を見て回ったのですが、今回は割愛します。

おわりに

まとめ

横浜の歴史と展示物をリンクさせる企画展という予備知識を持って向かったのですが、横浜美術館は横浜市の事業であり、「明るく」「楽しく」「臭い物には蓋をする」というものを想像していました。
ところが実際に行ってみると、巧妙でかつ攻めた、ハッキリ言うと硬派な展示でした。
私が美術館に行くようになったのは、彼女と付き合い始めてからのここ1年で、彼女の趣味に合わせてです。もともとアートに対する理解が乏しく、美術館に行っても図録を買うことなど買うことはありませんでした。
思い出しながらこの記事を書いていて、はじめて図録が欲しくなってきたため、ミュージアムショップの公式通販で図録を購入してしまいました。人生初です。

6月2日までと残り期間が短いのですが、お近くのかたでご興味がある方、ぜひ行ってみていただきたいです。
興味は人それぞれだけど、絶対行った方がいいよ!

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